●下剤依存に陥ってしまう人たち
便秘から逃れるために市販の下剤を規定量を超えて常用している状態を「下剤依存」といいます。一般的に市販されている下剤(便秘薬)の多くは、腸に刺激を与え、ぜん動運動を高めて排便を促しますが、これを常用していると、腸の粘膜が炎症をおこす上に、腸が自分自身で動くことができなくなってきます。その結果、悪玉菌が増殖するなど、負のサイクルに陥ってしまうのです。
食物繊維や乳酸菌で腸の健康を保ち、自然治癒力を高め、薬を常用しなくても日々お通じが自然に訪れる状態になることが、美容と健康になにより大切なのです。
●「~だけ食べる」のダイエットは危険
テレビ番組やSNSなどで発信されるダイエット法で「トマトばかり食べる」「リンゴだけ食べる」といった「○○だけダイエット」を見かけますよね。あれを鵜呑みにしてはいけません。食材の偏りは栄養バランスを著しく損なうだけでなく、腸内の菌の種類まで減らしてしまうことにもつながり、ひいては普通の食事で下痢をしてしまう、などという状態にもなりかねないのです。
いろいろな食材をバランスよく取り入れることこそ、腸内の菌のバランスが保たれ、免疫力がアップするということを肝に銘じて頂きたいです。
●ヨーグルト神話を過信しない
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は確かに身体に有益なことが多く、積極的に摂取することでいい面もたくさんあります。しかし一方で、日本人には乳製品のアレルギーを持つ方もいたりして、むやみにヨーグルトばかり食べていてアレルギーで下痢になった、肌が逆に荒れてしまった、などというケースもあるのです。
たとえば乳酸菌を意識するのであれば、キムチやぬか漬けなどからも摂取できますので、ひとつの食材にこだわりすぎずに、いろいろな食材から取り入れる方が腸内の菌たちのバランスを保つためにもよいのです。場合によってはサプリメントなどで補給するのも悪くありません。また、ヨーグルトもいろいろなタイプのものが市販されていますので、ときどき銘柄を変えてみたりすることで、今の自分に合ったタイプが見つかることもあります。
──最後に、20代から30代の女性たちにメッセージをお願いします。
仕事に、プライベートに、大変忙しい日々を送っている年代ですよね。私自身の研修医時代を思い出しても、とにかく忙しく、睡眠時間も充分でない上に食事も不規則で、夜中に医局で菓子パンやデリバリーのピザを食べるのがその日の第1食、などということも珍しくありませんでした。
慢性的な便秘をかかえた上、肌の調子も悪く精神的にも不安定だった時期でもあります。「もっともっと輝いていい年代なのに、なんで?」と思い、腸の健康に着目し、食事や生活習慣を自分なりに試行錯誤しながら少しずつ改善していくと、徐々に自然なお通じが訪れるようになってきました。便秘が解消されるにつれて、肌も改善され、気持ちも上向きになり、あらゆることが好転していったのです。そして確信をもちました。「腸はすごいぞ」、と。
ですので、今、20~30代の女性たちに対しては、細胞の若さがピークのこの時期にこそ、食事をはじめとして「腸にいい生活」を工夫して取り入れて頂きたいと願っています。
難しいことをやる必要はありません。たとえば、
- 朝起きたらまず1杯の水を飲む
- 食物繊維を一日のどこかで、ちゃんと取り入れる
- 暴飲暴食をしてしまった翌日には、食事を一食スムージーなどに置き換えて腸を休める
など、腸活を意識したちょっとした習慣を生活に無理のない範囲で取り入れ、それを継続していくことが大切なのです。食事だけではなく、質のいい睡眠や、できる範囲で運動を続けることも大切です。そういったことが、10年後、20年後の自分の肌の輝きや心身の健康に大きく跳ね返ってくることを、ぜひ多くの方に知って頂きたいと思います。