──睡眠の質の良し悪しが、肌や身体にどのような影響を及ぼすのか教えてください。
発育期の子どもの場合、睡眠は体を作るためのもの。眠っている間に出る「成長ホルモン」が骨や筋肉の発達に欠かせないことはご存知でしょう。この「成長ホルモン」は大人になってからも出ていて、特に深い眠りの状態であるノンレム睡眠中に大量に分泌されます。
皮膚や髪の毛は毎日少しずつ入れ替わりますが、古くなった皮膚細胞や内臓組織を修復し、再生を促すのが、まさにこの「成長ホルモン」なのです。皮膚の細胞が新しくなれば肌がきれいになり、内臓組織が修復されれば健康に繋がります。毎日使っているスキンケア用品がお肌の外から美を保つものだとすれば、睡眠は体の内部から毎日、肌や髪の毛の基礎を作っているといえます。
当然、夜更かししたり睡眠が足りなかったりすると化粧ノリが悪くなったり肌荒れしてしまうことにつながります。
この、美容にとって大切な「成長ホルモン」は、睡眠の前半に出ることが分かっています。しかも、深い睡眠の時にたくさん出るので、寝つきのよさは美肌にも直結します。これをコントロールするのが、「メラトニン」というホルモンで、夜9時くらいから出始め夜中に最も高く、徐々に低くなっていきます。朝が近づくにつれて今度は「コルチゾール」というエネルギーをつくり出すホルモンの働きで体温が上がり、スッキリとした目覚めに繋がります。
──現代人は睡眠時間が足りないと言われています。そもそもどのくらい寝ればいいのでしょう?男女差はありますか?
私が日本人の成人男女3万人以上を対象に行った調査では、男性の平均睡眠時間は6時間、女性の場合6時間30分です。これに肥満度の目安になるBMI値を当てはめてみると、男性では7時間15分、女性では7時間寝ている人が最も低い、つまりスリムだということがわかりました。この数字から見ると、女性はあと平均30分くらい長く寝ると、ダイエット効果が期待できるかもしれないですね。
ただし、睡眠時間は長ければいいというものではありません。必要以上に長く眠ると睡眠の質が低下し、眠ったという満足感が得られにくくなります。昼間、しっかり活動して適度に疲れ、夜はばったり眠るのが理想的です。