化粧品のコマーシャルなどでよく聞かれるようになった成分、「プラセンタ」。
肌にいいらしい、というような漠然としたイメージはあるものの、そもそもどんな成分なの?どういう効果が期待できるの?など、疑問はいっぱい。そんな気になる「プラセンタ」を、美容皮膚科医の監修で、徹底解説します。
佐藤 薫先生
かおるクリニック院長。日本形成外科学会認定専門医。
昭和大学医学部卒業の後、昭和大学藤が丘病院形成外科・麻酔科、昭和大学形成外科、埼玉県立小児医療センター、虎の門病院形成外科などを経て、自身のクリニックを開業。経験に基づく知識や技術をもとに最新医療を取り入れ、美容皮膚科・形成外科医としてひとりひとりの肌の悩みに応じた治療法を提案。スキンケアの指導にも力を入れている。
化粧品のコマーシャルなどでよく聞かれるようになった成分、「プラセンタ」。
肌にいいらしい、というような漠然としたイメージはあるものの、そもそもどんな成分なの?どういう効果が期待できるの?など、疑問はいっぱい。そんな気になる「プラセンタ」を、美容皮膚科医の監修で、徹底解説します。
──栄養たっぷりのプラセンタ
ズバリ、プラセンタとは「哺乳動物の胎盤」のこと。この胎盤からエタノールで抽出したものが、化粧品などに配合されているプラセンタエキスです。
胎盤には成長因子や体内で作り出せない複数の必須アミノ酸など豊富な栄養素が含まれていることが分かっています。野生の哺乳類などが、出産後に排出される自分の胎盤などを食べることがあるのはよく知られていますが、これなどは本能で自身の身体を回復させる行為とも言われています。
そこで医療現場では、免疫力を上げ、細胞の活性化につながるという効果が期待され、肝機能改善やアトピー性皮膚炎、更年期障害などの治療場面でも用いられてきました。
健康のためにプラセンタが注目されてきた歴史は実は古く、漢方の分野では、プラセンタは「紫河車(しかしゃ)」として古代より用いられている生薬でもあります。日本でも、第二次大戦末期の頃にプラセンタを含む経口栄養剤が開発され、母乳分泌不全や新生児の死亡率改善のために用いられたという史実もあります。
──美肌効果が高いといわれるのはなぜ?
プラセンタには10数種類のアミノ酸や核酸様物質、さらに各種ビタミン類、ミネラル、酵素、ムコ多糖類など、豊富な成長因子が含まれています。
成長因子は細胞の成長や形成を促進するものですが、厳密にいうと化粧品などのエキスに加工する段階でピュアな成長因子としては存在しなくなります。しかしながら、いろいろな研究から、成長因子様作用により、肌のハリ向上やターンオーバーが期待できる線維芽細胞増成などの作用が認められおり、アンチエイジング対策の成分として、注目されてきたというわけです。
──プラセンタには副作用がありますか?
プラセンタの利用については、このように長い歴史がある分、研究も進んでおり、比較的副作用も少なく安全性も高いとされていますが、採取元の母体の状態によっては感染症のリスクもゼロではありません。
しかしながら、豚や馬などの動物を主として原料としている国産のプラセンタは、厳しい基準により加熱滅菌処理が行われております。たとえば狂牛病の発生に伴い、日本では厚労省より「狂牛病が発生した国の牛や羊などの胎盤は原料にしないこと」と通達されています。
このように、厳しい基準が設けられている国産メーカーの化粧品であれば、感染症リスクはほぼないと言ってよいでしょう。また、信頼できるメーカーのものを選ぶことが大切です。
──動物性プラセンタ
このように「哺乳動物の胎盤」であるプラセンタは、主としてヒト、ブタ、ウマなどのものが原料として用いられています。このうちヒトプラセンタについては、現在、医療用途でのみ使用が認められており、医療用サプリメントなども存在します。一方、化粧品などに使用されるものはブタプラセンタとウマプラセンタが主流です。
ブタプラセンタは現在、最も多く用いられており、市場にあるプラセンタ配合の化粧品の9割を占めているとされています。その理由として、豚の分子構造が比較的人間に近く、栄養分をスムーズに取り入れられること、また、入手しやすさから、価格も比較的安く抑えられるという面もあります。
一方、ウマプラセンタはサラブレット等の胎盤から抽出されます。豚よりもアミノ酸が豊富に含まれている点や、食用で生の馬刺しが認められているように、体温が高く寄生虫などの心配もないという安全性も注目されています。ただ、豚に比べて希少性が高いため、製品が高価になるという傾向はあります。
──植物性プラセンタ
哺乳動物の胎盤、という意味をもつプラセンタですが、最近では胎盤と似たような機能を持つ素材のことも、一部ではプラセンタと呼ばれることがあります。
「植物性プラセンタ」と言われるものは、植物の種が含まれる「胎座」の部分から抽出したエキスのことです。アミノ酸やミネラル、ビタミンなどが含まれており、これらの栄養素による保湿や美白効果が期待されています。
──動物性プラセンタと植物性プラセンタ、違いを知って使い分けよう
動物性、植物性、それぞれのプラセンタの特徴についてはお分かり頂けたでしょうか?
どちらのプラセンタにも、化粧水や美容液、クリームなどスキンケアコスメに用いられていますが、特徴を知って使い分けることで、より求める効果が期待できます。
植物性プラセンタのメリットは、動物性のものよりもクセのある匂いがなく、アレルギーのリスクも少ないことがメリット。一方、動物性には胎盤本来の多くの成分が含まれており、細胞活性化などアンチエイジング効果を期待するのであれば、動物性を選ぶ方が合理性があるといえます。
──どんなプラセンタ化粧品を選べばいいの?
プラセンタの効果を期待するのであれば、当然、プラセンタ濃度が高いものを選ぶこと。
化粧品の成分表は、配合量が多い順に記載されていることはご存知ですよね?ですので、ズラリと並ぶ成分の中で、少なくとも前半に記載されているものを選んでください。
また、前述したプラセンタの種類ごとの特徴を押さえておくこと。もしアンチエイジング効果を期待するならば、動物性プラセンタが配合されているものを選ぶこと、などです。
──肌悩みに合わせて選ぶのもアリ!
プラセンタは肌細胞の活性化や血行促進が期待できるため、そのほかの美容成分と組み合わせると、さらに効きそうなお悩み別のプラセンタ利用法が見えてきます。たとえば、下記のような選び方をしてみてはいかがでしょう。
いかがですか?自分ならではのプラセンタ選びができそうな気がしませんか?
──効果的な使い方は?
プラセンタ化粧品だからといって、特別な使い方は必要ありません。基本的に普段の化粧水や美容液などと同様、それぞれの製品の説明書に従って、正しく使用してください。
成分を行き渡らせるためには、ハンドプッシュなどで肌を包み込むように優しくなじませてください。ただし、「せっかくの成分だから目いっぱい浸透させよう!」などと、強い力でたたき込んだりすると、肌への刺激になってしまってトラブルになることもあるので、ご注意を。
良質な製品を正しく使うことで、プラセンタの魅力は発揮できるはず。魅力的な成分として、ぜひ上手に取り入れてください。