【2024.01.05】能登半島地震にともなう配送遅延について

「季節を問わず、冷えに悩まされています。改善する方法はあるのでしょうか?」

「冷え症は身体の不調や大きな病気にも繋がる現代病。気がつきにくい“隠れ冷え症”にも注意が必要です」

伊東エミナ先生プロフィール

伊東エミナ先生

医療法人社団JOY 理事長。医学博士。東京女子医科大学医学部卒業。同大学内分泌内科勤務後、米国ヴァージニア大学へ留学し、ホルモンとアンチエイジングに関する研究に従事する。米国滞在中、自身の病気をきっかけとして病の本質的原因に興味を持ち、予防医学に関する研究を開始。帰国後にクリニックを開設。米国の機能性医学・脳医学の最先端治療を統合し、個人の心身の状態に応じた根本治療を実践。“病気にならないからだづくり”のサポート、及び武道の要素を基にした「気練®エクササイズ」の指導を、予防医学の一環として行っている。2019年よりブレインDr.®としての診療を本格的に開始。

「冷え症」は、血流が低下し細胞が栄養失調になった状態

冷え症は血流が低下し細胞が栄養失調になった状態

──そもそも「冷え症」とはどういう状態をいうのでしょう? また、「冷え症」になる原因と、女性に多い理由も教えてください。

最もわかりやすい冷えの症状といえば、手足が冷たくなることですが、実は肩こり、腰痛のほか、頭痛や、便秘・下痢といった胃腸の不調、月経異常や不妊なども冷えに起因することが多いのです。これらを私は“隠れ冷え症”と呼んでいます。実は西洋医学に「冷え症」という病名はありません。そのため、周囲に理解されにくく悩みを抱え込む方が多いのですが、一方で、東洋医学では古代からさまざまな病気の兆候として重要視されてきました。

冷えの原因は、体内でエネルギーの生産がきちんとできていないこと。すると代謝が悪くなり、血流が低下します。血液は栄養素とともに酸素やホルモンなどを細胞に届ける働きをしていますから、血液が体の隅々まで届けられなくなると細胞が栄養失調に陥ります。これが冷えの状態です。血流の低下により細胞にたまった老廃物も排出されなくなり、むくみやコリ、痛みなど、さまざまな身体の不調を引き起こすのです。女性に冷え症が多いのは、ホルモンバランスなどのほか、筋肉量も関係しています。人体でエネルギー(熱)を産生するミトコンドリアが多い場所のひとつが筋肉で、男性に比べて女性は筋肉量が少ないため、冷えが起こりやすいのです。また、体内の脂肪が燃えにくくなり、太りやすくなることも。

さらに、冷えはメンタル面に影響を及ぼすこともあります。たとえば、「やる気が出ない」のは、血流の低下で脳に十分なエネルギーが供給されないため。重症化すると、うつ病に近い状態になることもあるんですよ。

自律神経の乱れが「冷え症」を引き起こす。背骨のゆがみが影響することも…

自律神経の乱れが冷え症を引き起こす

──では、「冷え性」の原因である、血流の低下、さらにそれを引き起こす代謝の低下は、なぜ起こるのでしょうか?

いちばんの原因は、自律神経の乱れによるもの。自律神経は脳とともに心臓、胃腸などのさまざまな内臓器官に係わる重要な神経です。ヒトの身体は活動時には交感神経が、休息時には副交感神経が活発になることはご存知でしょう。これをコントロールしているのが自律神経。たとえば、興奮すると血管が収縮し心拍数が上がり、リラックス時は血管が拡張し血圧が下がるのも、自律神経の働きによるもの。この切り替えがうまくいかなくなると、代謝が低下し、血流が悪くなります。
では、自律神経の乱れを引き起こす、3つの要因をご紹介しましょう。

●過労、ストレスなどの外的要因

自律神経の乱れを引き起こすわかりやすい例が、過労、ストレスといった外的要因です。長時間、緊張状態が続くと交感神経系が優位に働き続け、血管が収縮し血流が悪化。手足が冷たくなるだけでなく、脳、胃腸など、身体のあらゆる臓器にも影響を及ぼします。

●腸内環境の悪化

自律神経と腸は大きく関係しています。胃腸の働きを促すのは、リラックス時に優位になる副交感神経なのですが、ストレスや食生活の乱れなどで腸内環境が悪化するとこの副交感神経の働きが悪くなり、自律神経の乱れを引き起こします。反対に、自律神経の乱れが腸内環境の悪化に繋がることもあるのです。

●背骨のゆがみが自律神経の働きを阻害する

自律神経は背骨の隙間を通って身体の各所へ繋がっているので、背骨にゆがみがあると流れがスムーズにいかなくなり自律神経障害が起こるのです。私のクリニックで行っている、背骨のゆがみを矯正する「脊椎(せきつい)調整治療」で冷えの症状が改善される患者さんは少なくありません。

それぞれの原因と症状に応じた治療+「ポジティブ・シンキング」で冷えを改善する。

それぞれの原因と症状に応じた治療

冷え症の原因はひとつではなく、根本的な治療には個々のプロファイリングが必要ですが、ここでは日常生活に簡単に取り入れられる方法をご紹介しましょう。

●入浴時は必ずバスタブに浸かる

季節を問わず、入浴時はバスタブに浸かってください。40℃くらいのぬるめのお湯に、じっくり10分は浸かること。5分を2回に分けてもいいでしょう。アロマオイルを垂らしたりするのも効果的。リラックスする時間を持つことで、自律神経の働きが整います。

●旬のものをバランスよく食べて、腸内環境を整える

自律神経と腸内環境が密接に関係していることはお話ししました。腸内環境を整えるためには、食物繊維や乳酸菌がよいとされます。でも、同じ食材ばかり摂り過ぎるのはよくありません。旬のものを、例えばこれからの季節であれば根菜類などをバランスよく食べることが大切。夏野菜のトマトやキュウリを食べすぎたり、甘いものの摂りすぎも冷えにつながるので注意してください。

●呼吸法+「フィンガースナップ(ぶらぶら体操)※」

呼吸は唯一、意識的に自律神経をコントロールできる方法。「息を大きく吸う→呼吸を止める→息を大きく吐く」をそれぞれ5つずつ数えながらゆっくり行ってみてください。いったん呼吸を止めることが、自律神経にいい刺激を与えます。
また、簡単なエクササイズも血流の改善に効果的。肩の力を抜き、肘から下を前と左右にぶらぶらさせる「フィンガースナップ」を試してみてください。朝、起きたときや、手足の冷えが気になるとき、10回くらい続けると身体の中からポカポカしてくるのがわかりますよ。
※「気練®エクササイズ」より抜粋

●自分をほめて、ポジティブ・シンキングに

自分を認めることは、自律神経にとてもいい刺激になります。ぜひ、1日1回は、自分のことを「今日はよくがんばったね」とほめてあげてください。他人からほめられるとうれしいでしょう。でも、自分自身でほめてあげても同じような効果があるんですよ。

冷え症は確実に増えていて、今や現代病のひとつともいえます。冷えが原因で重大な病気になったり、反対に病気が冷えを引き起こしていることもあります。「たかが冷え症」と軽く考えないで、改善しないときはクリニックを受診して、根本となる原因を治療することをおすすめします。