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「春先から、不安感や倦怠感を感じます。
これって五月病というもの?」

「4月からの環境の変化がストレスになり、
メンタル不調になることも。
早めに医師の診断を受けることをおすすめします」

安保肇子先生プロフィール

安保肇子(あぼ はつこ)先生

茅場町こころのケアクリニック院長。日本精神神経学会認定精神科専門医。慶應義塾大学、金沢医科大学を経て、関西医科大学大学病院 精神神経科入局。田町クリニック院長を務めた後、現職へ。産業医などの経験も含め働く人の職場の悩みやストレスを抱える方のメンタルヘルスに長年取り組む。日本医師会認定産業医、日本アロマセラピー学会、日本抗加齢医学会にも所属。

4月からの環境の変化がストレスになり、メンタル不調になることも

「五月病」といわれる春先のメンタル不調、その原因と症状とは?

五月病の症状とは

──そもそも「五月病」とは、どういった症状なのでしょうか?

まずお話しておきたいことは、医学的には「五月病」というのは正式な病名ではありません。
春先は、働いている方にとっては配置転換や転勤、新年度の始まりに伴う業務の変化など、環境が変化することが多いですよね。新生活への期待やワクワク感も覚えたりしますが、一方で環境の変化により心が張り詰めた状態になり、知らず知らずのうちに心身に負担がかかりがちになるものです。近年は女性も責任ある業務や役職を任されるようになっており、やりがいとともに仕事や職場での負荷が高まってきているように感じます。こういった状況により、倦怠感や不安感が生じる状態が「五月病」と表現されているわけですが、正式な病名としては鬱病や適応障害、パニック障害などに該当するケースも少なくありません。
また、女性特有の原因としてPMS(月経前症候群)などの影響を受けることもあります。イライラ感がつのることで、周囲の人間にキツくあたってしまったり、さらにそのことを後悔して気持ちが落ち込んだりすることも多いのです。

──どんな自覚症状があるときに、注意すべきでしょうか?

多くのメンタル不全について、まず症状としてあらわれがちなのが「不眠」。身体は疲れているのに眠れない。また、寝たとしても何回も起きてしまい、朝になっても疲れが取れない、といった症状です。
日中でも「ランチに何を食べようかな?」と思える気分になれず、何を食べたらいいか思いつかない、食欲がない、でもとりあえず食べなきゃ、など、食に対する意欲が薄らいでくることもあります。
それ以外でも、以前なら1時間でできた業務が2時間かかってもうまくいかない、集中力が落ちてくる、仕事のイージーミスが増えた、といった現象などもあります。休日はアクティブに過ごしていたのに、やる気がおきずダラダラと過ごしてしまう、といった場合も要注意。心の緊張による筋肉のこわばりのせいか、頭痛や肩こりの症状が悪化する、といったケースもあります。心の健康と身体の健康は、密接に結びついているのです。

「今、心が弱ってる?」そう感じたら生活の見直しを

アロマオイルを利用

──心の健康のために自分で気をつけるべきことなど、アドバイスをお願いします。

ストレスを取り除くこと、リラックスできる生活を心がけることに尽きます。
職場のストレスであれば、心にため込まず周囲に相談してはき出すことも大事です。上司でも同僚でもいいので、気軽に相談できる相手がいることはとても有効ですし、仕事に関係のない友人にグチを聞いてもらうだけでも、心の解放につながることは多いんです。
また、お風呂にゆっくり入ることで副交感神経を刺激し、ゆったりとした気持ちになることは、安眠にも結びつきます。アロマオイルを利用してアロマバスにしたり、寝るときに枕にお気に入りの香りを少し垂らしてみたりすることも、おすすめです。それと、休日も平日とあまり違わないライフサイクルで寝起きすることも、身体のリズムを安定させ、安眠につながりますので、心がけて頂ければと思います。

「心の不調」を感じたら、気軽にクリニックで相談を

「心の不調」を感じたら、気軽にクリニックで相談を

──最後に、心療内科医として、心の不調を感じる方々にメッセージを頂けますか?

喜ばしいことにメンタルヘルスの重要性については社会や企業の理解も高まり、心療内科を受診することへの抵抗も、近年はとても少なくなってきています。
それでもやはり、少し抵抗感のある方も少なくないと感じます。また、「薬をたくさん出されてしまうのではないか?」など心配される方もいらっしゃるようです。もちろん、薬を処方することが必要だと判断する場合にはおすすめしますが、患者さんのご要望に応じて漢方など身体への負担が少ない治療も選択できますし、医師と話すことだけでも心が落ち着くなど、環境改善などのアドバイスのみで快方に向かうケースもあるんです。
他の病気と同じく、メンタル不調も早期に対応することが改善への早道。たとえば1週間ぐらい不眠が続くなどの症状があったら早めに医師に相談することをおすすめします。風邪をひいたりお腹をこわしたりするのと同じように、ちょっとした不調でも気軽にクリニックを訪ねて頂ければと思います。