治ったと思った吹き出物。さらに炎症がおさまったあとも、シミのように肌が変色したまま痕が残ってしまった…
そんな憂鬱な経験、ありませんか?
色素沈着は美肌の大敵。どういうメカニズムでおこるのか?予防法や治療法は?など、きちんと知って、適切に対応できるようにしておきましょう。
小澤 佑美先生
医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。現在同じく皮膚科専門医の妹とともに父親の開業するクリニックで皮膚科・美容皮膚科を担当。女性ならではのキメ細やかな診療が信条。日本美容皮膚科学会、女医プラス所属。
治ったと思った吹き出物。さらに炎症がおさまったあとも、シミのように肌が変色したまま痕が残ってしまった…
そんな憂鬱な経験、ありませんか?
色素沈着は美肌の大敵。どういうメカニズムでおこるのか?予防法や治療法は?など、きちんと知って、適切に対応できるようにしておきましょう。
──そもそも色素沈着とは?
日焼けやニキビ、虫刺され、やけどや傷などが治癒したあとも、茶色や黒っぽい色が肌に残ってしまう状況を、色素沈着といいます。
色素沈着には大きく分けて2種類あり、上記のような皮膚の炎症を原因とする「炎症性色素沈着」と、フェイスブラシやナイロンタワシ、衣類などによる強い摩擦、また長年にわたる摩擦によって引き起こされる「摩擦性黒皮症」があります。
たとえばワキやヒジ、ヒザ、デリケートゾーンなどが黒ずんでくるなど、顔以外のボディなどで、よく見られます。
また、紫外線も色素沈着を起こす要因となることが知られています。
──肌の炎症や摩擦によって起きる
もう少し詳しく色素沈着のメカニズムを説明しましょう。
前述のような原因で肌の炎症や刺激が生じると、肌は自らを守るために表皮の色素細胞(メラノサイト)からメラニンを過剰に生成します。
このメラニン、通常は肌のターンオーバーによって排出されていくのですが、ホルモンバランスの乱れや肌のバリア機能の劣化などの要因により、ターンオーバーのサイクルが乱れると、うまく排出されず残ってしまい色素沈着になってしまうのです。
過度な洗顔やマッサージ、かゆみへの掻き壊しなどの摩擦でも、炎症を招き色素沈着を起こすことがあります。
症状がひどい場合は皮膚科で専門的な診断と治療を受けることをおすすめしますが、日常的には紫外線や物理的刺激・摩擦などを避けること、また、色素沈着を抑制する成分を含む化粧品を取り入れるなどの工夫で、予防したり改善をはかれることもあります。
──ハイドロキノン
ハイドロキノンといえば、「美白効果」「シミの改善」などが期待できる成分として気になっている方も多いのではないでしょうか。日本では2002年に認可され、医療機関のみではなく市販の化粧品にも配合されるようになりました。
メラニン色素の生成に関わる酵素、チロシナーゼの働きを抑制することから、色素沈着によるシミを改善する「美白剤」としての効果が期待されています。
しかしながら、強い成分であるために濃度が濃すぎたり、肌が弱い方の場合、炎症やかぶれをおこす可能性も指摘されています。
医師と相談しながら試してみる、市販のコスメを使うならば商品の説明書をよく読み、正しい使い方をすることが大切です。
──ビタミンC誘導体
美白といえば、まずはビタミンC誘導体!と思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
そもそもビタミンCは不安定な成分なので、そのままではコスメなどに配合できません。これを成分として安定させ、肌へ浸透しやすくさせたものがビタミンC誘導体です。こちらもハイドロキノンと同じく、メラニン色素を生成するチロシナーゼの活性を抑える働きがあり、シミやソバカスの予防に加え、できてしまった色素沈着の解消が期待できます。
また、ビタミンC誘導体は皮脂分泌抑制作用もあるため、色素沈着の元になりやすいニキビの予防も期待できます。
一方で、皮脂分泌を抑制するため、乾燥肌の方などは保湿成分もきちんと補うようにした方がよいでしょう。
──プラセンタなども有効
色素沈着を改善するには肌のターンオーバーが健やかに行われることが大切だというお話は、前の章で説明しました。
そこで注目したいのがプラセンタです。この成分には皮膚細胞の再生・修復を行う成長因子がありますので、ターンオーバーを整え、メラニンの排出を助ける(=色素沈着の改善を図る)という効果が期待できます。
また、抗炎症作用もありますので、色素沈着の原因になる肌の炎症を抑えてくれることも、期待できます。
いくつかの有効成分を紹介しましたが、これらの成分は肌やトラブルに合わせて選ぶことが大切であり、特に深刻な肌トラブルの場合は皮膚科医に相談をしながら日頃のスキンケアに取り入れるようにしましょう。
──ケアは保湿と同時に行うことが大事
色素沈着の予防、改善が期待できる成分をいくつかご紹介しましたが、いずれも同時に保湿もケアしていくことが大事です。
というのも、肌の乾燥はバリア機能を弱らせ、色素沈着の原因となる炎症を引き起こしやすくなるからです。
ですから、市販のスキンケアコスメなどを選ぶときには、美容液やクリームなど保湿成分が充分に配合されているアイテムで、かつ、上述の色素沈着改善が期待できる成分を含んでいるものを取り入れる、などの基準で選ぶのがよいでしょう。
──化粧品の選び方
ご紹介した成分は、一般の化粧品にも広く配合されているので、これらが入った化粧品を見つけることはそんなに難しくないかと思います。
ただ、ひとくちに成分を含むといっても、含有量が少なすぎると残念ながらあまり効果が見込めません。
そこで、商品選びで注目して頂きたいのが、パッケージに記載された成分表。
医薬品、医薬部外品コスメであれば「有効成分」の項目をチェックしてください。ここに、上記の成分が記載されている場合は、色素沈着への効果が期待できます。もしくは、成分表は一般的に成分量が多い順に記載されているので、なるべく前の方に気になる成分が記載されているものを選ぶとよいでしょう。
最後になりますが、色素沈着を防ぐためには肌のバリア機能を整え、ターンオーバーを促すことが一番大切な予防。バランスのいい食事や充分な睡眠など、健康的な生活もあわせて心がけるようにしてくださいね。