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「ホルモンバランスを整えるには?
日常に取入れやすい方法を伝授」

森智恵子先生プロフィール

森智恵子先生

日本産婦人科学会専門医、精神科指定医、麻酔科標榜医、日本医師会認定産業医、世界レーザー医学会認定医、サーマクール認定医。女性婦人科と美容皮膚科で併せて25年、女性と向き合い続けてきた経験から女性の心身を熟知。現在は天神レディースクリニック、院長として活躍。

女性の健康と美容にとって強い影響力を持つ「女性ホルモン」。
「そもそも女性ホルモンってどんなもの?」「ホルモンバランスが乱れるとどうなるの?」など、気になることはたくさんあっても、詳しく理解できていない方も多いのでは。
今回はそんな女性ホルモン、そしてホルモンバランスについて解説していきます。健やかな体と心を保つために、ぜひ参考にしてみてください。

女性の体と心の健康に影響、ホルモンバランスとは?

まずは女性ホルモンがどのようなものか、女性ならではの体のしくみについて、ご説明します。

アドバイスする女性イメージ

──女性の体の周期や成長にかかわる

ホルモンは、体内に分泌され、さまざまな器官や組織をコントロールする物質です。その中でも女性ホルモンは、女性らしい体つきを作り出したり、女性の健康や心を健やかに保つ働きを担っています。
その女性ホルモン、実は「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類があり、それぞれが月経と連動して一定の周期で分泌量が増減します。

エストロゲンとプロゲステロンの説明図

それぞれのホルモンの特徴について、詳しく見てみましょう。

■エストロゲン=卵胞ホルモン。女性特有の丸みを帯びた体をつくったり、肌や髪のハリや潤い、骨密度など女性の体全体の健康を支える役割を持ちます。
また、自律神経にも働きかけるので、体のみならず心の健やかさにも作用するホルモンです。

■プロゲステロン=黄体ホルモン。基礎体温を上昇させたり、子宮内膜や乳腺を整えたりと、健全な妊娠維持に必要なホルモンとして知られています。生理前に体の変化が訪れるのは、プロゲステロンの作用といわれています。

俗に「ホルモンバランスが乱れる」というのは、これらの分泌が正常に行われなかったり、増減のサイクルが変化したり、加齢などによって分泌量が減ったりする状態を指します。この「ホルモンの乱れ」は、女性の体と心にさまざまな影響を及ぼしてしまいます。

──基礎体温表をつけると分かりやすい

ホルモンバランスと基礎体温のグラフ

「自分のホルモンバランスは乱れていないだろうか?」気になってきますよね。
これを把握するには、まずは基礎体温表をつけることをおすすめします。
女性ホルモンの分泌が正常なリズムで機能している場合、体温は生理の開始から排卵日までの低温期(28日周期の人だと通常14日ほど)、それ以外の高温期の二層に分かれます。
ところが、約1ヶ月の周期で全体的に二層に分かれていなかったり、一定の体温の周期や持続期間が乱れていたりする場合は、ホルモンバランスの乱れが疑われます。

基礎体温は、起床後すぐに横になったままで計るなど、毎日同じ時間帯に計るようにしましょう。最近ではPCやスマートフォンで基礎体温を管理できるアプリも出ています。忙しい方はそれらを上手に利用するのもよいでしょう。
また、不調を感じて医師の診断を受けるときなども、基礎体温をつけていることで診断がより早く正確につきます。ぜひ一度、試してみることをおすすめします。

基礎体温の計測イメージ

ホルモンバランスが乱れるとどうなる?

ホルモンバランスの乱れによりおこるPMSの症状イラスト

それでは、ホルモンバランスの乱れは具体的にどんな症状に結びつくのでしょうか。症状別に解説していきます。

──生理不順や不正出血、不妊などの原因に

ホルモンバランスの乱れが一番直結するのは、女性機能に関する不具合です。
生理周期が乱れ、PMS(月経前症候群)や頻発月経、無月経になったり、出血量が過度に多くなったり少なくなったり、不正出血が長引くこともあります。さらに、子宮内膜症など日常生活に支障を起こすことも多く要注意です。
また、卵子の排卵や着床が困難になり妊娠しづらくなるケースもあり、女性にとって深刻な問題につながることもあるのです。

──自律神経失調症などの体調不良

ホルモンバランスの乱れは、自律神経の乱れにもつながることがあります。自律神経は、体内の内臓の動きなどをコントロールする役割があり、これが乱れることにより頭痛や動悸、ほてりや多汗、さらに便秘や腰痛、肩こり、イライラ感や不安感、不眠などさまざまな症状を引き起こす原因にもなり得ますので要注意です。40代以上の女性によく見られる更年期障害なども、ホルモンバランスの乱れに大きく起因しているのです。

体や心に不快な異変を感じるとき、その原因の一つとしてホルモン分泌が不安定になっている状態を疑ってみることも必要です。

──肌荒れや大人ニキビなどを引き起こす

ホルモンバランスの乱れは、肌コンディションにも影響を及ぼします。具体的には、皮脂の過剰分泌がおきたり、毛穴周りの表皮が厚くなって詰まりやすくなるなど、ニキビやくすみ肌の原因になることがあるのです。
また、エストロゲンがうまく働かないことによって肌の潤いが生み出せず、肌のターンオーバーの乱れからバリア機能が低下し、乾燥肌や敏感肌の原因になることもあります。
ホルモンバランスは、健康のみならず美容面でも重要なファクターだということがよく分かります。

ホルモンバランスを整える方法

──食事の改善

食事をしている女性イラスト

残念ながら「これを食べれば必ずホルモンバランスが整う」というような特効薬と言える食材はありません。とはいえ、たんぱく質(肉や魚、大豆)、野菜、炭水化物、そして良質な脂質をバランスよく摂ることは大切です。
特に、エストロゲンに似た働きをするとされている、イソフラボンを含む大豆製品、骨量を補うカルシウムを含む小魚や牛乳、腸内環境を整える食物繊維などは積極的に取入れるようにしてくださいね。

何より大切なのは、食事内容だけでなく、適量をできるだけ規則正しく摂ることです。頻繁な間食や過度なお酒の摂取も、よくありません。健康的な食事を、心安らかに、楽しく摂ることを心がけてください。

──睡眠をしっかりとる

睡眠中の女性イラスト

ホルモンバランスを整えるためには、質の良い睡眠も欠かせないポイントです。遅くとも午後11時には布団に入り、6~8時間の睡眠をきちんと取るようにしましょう。睡眠時間の長さだけでなく、朝は日の光を浴びることで体内時計を整えることが自律神経を健全に機能させ、深い睡眠を得るために大切なことです。
また、睡眠の数時間前にはお風呂につかりリラックスすることや、睡眠前にはカフェインを摂らない、スマホやパソコンを見ないことも、質の良い睡眠を導くために有益です。

食事、睡眠に加え、適度な運動も血行や代謝を改善し、ホルモンバランスによい影響を与えることが期待できます。ヨガやストレッチなど、ゆったり体を動かし深い呼吸ができるエクササイズがおすすめです。
デスクワークが続くときなどは、1時間に1回ほど立ち上がって伸びをするなど軽く体を動かすことは腰痛や肩こりの防止だけでなく自律神経を整える意味でも有効です。

──ホルモンバランスが乱れた場合のスキンケア

スキンケアしている女性イラスト

前述したように、ホルモンバランスの乱れは肌トラブルに結びつくことがあります。乾燥やかゆみ、肌のべたつきなど、お肌の些細な信号にも注意してください。
ホルモンバランスの乱れは肌のバリア機能を弱め、乾燥や敏感肌などになりやすい傾向があります。そうした症状を感じたら、まずは保湿対策をすることが大切です。ヘパリン類似物質やアミノ酸、セラミド、ヒアルロン酸などの保湿成分を含むスキンケア商品で補うこともおすすめです。
さらに基礎化粧品を見直すのもひとつの方法です。全部のアイテムではなくとも、お使いのスキンケアアイテムの1つから変えてみるのもいいかもしれませんね。また、化粧水をしっかり浸透させて保湿したり、乳液、クリームなどはオイリーな箇所を避けて塗るなど、肌の状態に合わせて日々変えてみることでトラブルが改善されることもあります。

いかがでしたか?ホルモンバランスの乱れは、女性の美容と健康にとって大きなデメリットにつながります。より質の高い食事、睡眠、日々のスキンケアなど、生活を見直すきっかけにしてくださいね。